時を越え育まれる 永久なる庭の美観 – 植彌加藤造園株式会社



移ろう四季の美しさが凝縮された日本庭園。その素晴らしさを身近に感じられるようにと、講演やガイドツアー、庭をテーマにしたアーティストとのコラボイベントなど、画期的な試みを行っている造園会社がある。嘉永元年(1848年)より南禅寺の御用庭師を務める、植彌加藤造園株式会社である。8代目加藤友規社長によると、庭師の仕事の真髄は、作庭そのもののみならず、何十年、何百年という歳月をかけて、愛情をかけながら庭を“育成”していくことにあるという。その精神をゆっくりと肌で感じられるのが、植彌加藤造園が指定管理者を担う名勝 無鄰菴である。


南禅寺草川町の片隅にひっそりと佇むここの日本庭園は、観光客の数は少ないが、京都における近代庭園の先駆けとも言われる名園だ。足を踏み入れると、東山を借景とした開放的な芝生空間と、小川そのもののような躍動的な水の流れが目に入る。静謐にして清澄な空気が漂い、すぐそばを走る仁王門通りの喧騒が嘘のよう。京都の伝統的な庭園要素である苔でなく芝を張り、池ではなく琵琶湖疏水の軽快な流れを利用した自然風の庭園となっているのは、無鄰菴造営当初の持ち主である明治・大正時代の政治家、山縣有朋の思惑によるもの。野趣に富んだこの庭園には、初夏ともなれば野花が生え、長ずれば膝にまで達するほどであるというが、ここでは芝を機械的に刈るといったことはしない。


なぜなら、有朋がその野花をも愛でていたからである。その感性を汲み取り、野花の種類や開花時期などを把握、咲き終わり時期を見極め、ひとつひとつ手で摘んでゆく。密度を調整し、母屋からの距離に応じて芝生の長さを変えるなど、有朋が眺めていたであろう情景に思いを馳せながら手入れを施すのである。また、近隣の建物を隠しつつも、庭全体の奥行きや東山の借景を担保できるよう樹木を剪定するなど、環境の変化も考慮し、その時代にふさわしい景色を探求し続けていく。


加藤社長の座右の銘は、京都府三代目知事北垣国道氏の「楽百年之夢」だという。多くの人は100年生きられないが、北垣氏は、未来の私たちのために琵琶湖疏水事業に臨んだ。その恩恵を受け、豊かな疏水が流れる庭園の景色を、時を越えて楽しむことができる。人生には限りがあるが、それぞれの世代、それぞれの時間には価値がある。そんな「100年の夢」を思いながら、庭を育むべきだというのだ。庭を鑑賞する私たちも、価値ある“今”を噛み締めつつ、庭の美しさに酔いしれてみてはいかがだろうか。

無鄰菴

京都市左京区南禅寺草川町31番地/TEL:075-771-3909
開場時間/9:00~18:00 (4月‐9月)、9:00~17:00  (10月-3月)
(カフェは16:30まで)
入場料/410円(小学生未満、市内在住70歳以上は無料)
※コンシェルジュ付き庭園ガイドあり(別途料金要)
無鄰庵ホームページ


information

植彌加藤造園株式会社
京都市左京区鹿ケ谷西寺ノ前町45番地
TEL:075-771-3052

https://ueyakato.jp/

写真提供:植彌加藤造園株式会社